口八丁足八丁


 ガラス器具を扱っていますと、ひっかけたり手が滑って落としたりして、割ってしまうことがあります。でも、割らなくて済むことも、たまにはあります。

 ある学生は研究室生活だけでなく数多くの失敗にも慣れ、ガラス器具を割っても声を立てるような「へま」はしなくなった(それを実験が上手になったというのかどうかはわかりませんが)。例えば、あやまってガラス器具を落としても、咄嗟に足が出て、床への直撃を回避し4回に3回くらいは割らずに済むように成長した。
 ある日、Grignard 試薬を注射器で仕込んでいた。セプタムラバーから注射針を抜き取った時、手が滑って注射器が落ちてしまった。日頃の訓練の賜物なのか、学生は足を出して、注射器が割れる音を聞かずに済んだ。しかし、足に痛みを感じた。下を見ると、注射針が注射器をつけたまま足の指に刺さってゆらゆら揺れながら立っていた。抜いてみると、じわじわと血が滲みだして靴下に赤いスポットができるのを見て、なんでもかんでも足を出すのはやめようと反省したのであった。

ガラス器具を割らないことは大切ですが、怪我をしないことの方がもっと大切ですので、状況に応じて行動するべきですね。