話半分


 学生に指導をした場合、素直に言うことを聴く学生もいれば、聴かない学生もいます。少し質が悪いのは、「ハイ、ハイ」と返事はするのですが、あまり聴いていない学生でしょうか。

 ある学生がNMRで収率を出す方法を先輩に教えてもらっていた。「反応混合物に重溶媒を入れて均一に溶かして、そこに秤量した内部標準試薬を入れて、NMRを測ればええねん。ただ、重溶媒は高いから、沢山使う場合は反応混合物を予め分けるとかせなあかんで」という説明に「ハイ、ハイ」と逐一頷いていた。
 それからしばらくしたある日、先輩がその学生のNMRチューブを見ると、10 cmくらいの液量のサンプルを測定しようとしていた。先輩は「それはちょっと使い過ぎやろ」と言うたものの、ふと不安がよぎり、反応混合物の入っているフラスコを持って来させた。すると、そこには数mLの重クロロホルム溶液が揺れていた。
「なんで、こんなに勿体ないことをしたんや」
「いや、先輩が全部溶かすように言うていましたから」
「沢山使わなあかん時は、混合物を分けるように言うたやろ」
「そうでしたっけ?」
 その後、学生は重溶媒の価格が書かれているカタログを見せられて、真っ青になったのであった。

安い試薬だからといって、無駄に使って良い訳ではありませんが、高価な試薬を使う場合は、無駄に使わないように、より気を遣うべきですね。