打ち上げ失敗


 減圧蒸留をする時は、加熱してから減圧するのではなく、ある程度目標の減圧度まで到達した後に加熱します。前者のやり方ですと、しばしば突沸をしてしまいます。

 ある学生が減圧蒸留をしていた。順調に留出していたと思っていた途端、突如止まってしまい、液体が受器に溜まらなくなった。学生は何かの原因で減圧度が下がってしまったと思い、再度、液体が流出するまでと思い、油浴の温度を上げていった。
 その時、蒸留装置の上に挿してあった温度計がロケットのように飛び上がり、やがて放物線を描いて落ちていき、実験台の上で大破してしまった。その時の様子は、まるでスローモーションのようであった。その後、研究室の事故調査委員会が出した結論は、低沸成分が冷却管で液化されないまま通過し、冷却トラップで詰まらせてしまったことが原因であることが判明した。学生は減圧度が落ちたと思って加熱したので、減圧蒸留でありながら、装置内は加圧になっていたことが明らかになった。

学生がマノメーターなどで、蒸留装置内の減圧度をこまめにチェックしていれば、こういうことも起こらなかったのでしょうね。少しでも様子がおかしいと思ったら、そこから踏み込まずに自重するようにしましょう。