先端成長


 植物は茎や根の先端が成長していくという特徴があります。有機化合物でもそのような反応があれば面白いのですが・・・。

 ある学生がNMRを見て悩んでいた。2週間前にある化合物を合成して単離した際には、メチルエステルであった。それは確かである。それを溶媒に溶かしてサンプル瓶に保存していたが、それを濃縮して再度NMRでチェックしたところ、エチルエステルに変化していたのである。溶媒以外には何も入れていなかったので、溶かしただけで炭素鎖が1つ伸びたのである。あり得ないことと思いながらも、もしそれが本当ならば、凄いことである。
 先生に相談に行ったところ、即答で「クロロホルムに溶かして置いといたやろ」と言われた。見事に言い当てられた学生は、頭に『?』を残したまま、さらにパニックに陥ってしまったのであった。

クロロホルムには安定剤としてエタノールが加えられています。また、クロロホルムが分解して微量に塩化水素も含んでいます。酸触媒でエタノールがあると、エステル交換反応が起こっても不思議ではありませんよね。