一発逆転


 合成実験で習得するのが難しい技術の1つにカラムクロマトグラフィーがあります。混合物をきっちりと分けられるようになるまでは、ある程度の経験が必要です。当然ながら、それまでの間に、沢山の失敗もしなければなりません。

 ある学生が湿式法でカラムにシリカゲルを充填していた。シリカゲルの表面を乱さないように海砂を載せたが、ある部分が高くなっていた。学生はその高さの違いが気になって仕方がなかった。というのも、これまで何回も失敗を重ね、成功した回数の方が少なかったからである。そこで、「こんなことで失敗したら嫌や」と思い、高くなっている部分を横から叩いてならそうとした。しかし、思っていた結果のようにはならず、反対側の低い部分にある海砂が沈み込んでさらに段差がついてしまった。
 こうなるとパニックである。「叩いたら反対側が沈んだんやから」と考え、低くなった方を叩いた。すると、低くなった部分がさらに低くなり、素人目に見ても成功が期待できないカラムに変わり果てていた。学生は、結局その充填剤を使うことなく、廃棄して新しく充填し直したのであった。

充填剤は均一に詰めることが大切です。この学生の場合は、しっかりと詰めていない状態の時に海砂を入れてしまったのが、1つめの失敗です。シリカゲルの表面は水平に保つことが大切ですが、海砂はでこぼこがあっても問題はありません。また、横から叩いたためにその部分が密になってしまい、益々不均一になってしまいました。均等に力が加わるように上から叩いた方が良いでしょうね。