聖火リレー


 有機系の研究室では、取扱に注意を要する試薬を扱うことがあります。刺激性、毒性、催涙性、分解性などなど。中には発火性を示すものもあります。

 ある学生がラネーニッケルを用いた反応を仕込んでいた。こぼさないように注意深く加えていたはずであるが、仕込み終わった後の実験台を見ると粉末がいくらかこぼれていた。学生は大して気にするでもなく、その粉末を紙で掻き集めて、ゴミ箱に捨てた。
 反応を仕込み終わったので、学生は一息ついて休憩していた。すると、実験台の横に置いていたゴミ箱が燻り始めた。慌てて持ち上げたものの、どう対処して良いのかが分からない学生は、すぐ傍にいた他の学生に渡した。もちろん、渡された学生も同様である。そのうち、ゴミ箱の中に火が見え始め、怖くなった学生はゴミ箱を放り出して、先生を呼んだ。先生は流石に百戦錬磨である。冷静にゴミ箱に水を入れて鎮火したのであった。

実験室で火が出ると、パニックに陥ってしまいます。そのような状態であるにも拘らず、責任を感じて自分で処理をしようとしますと、さらに被害を大きくしてしまうことがあります。近くにいる冷静な人にお任せするべきですね。