容疑者はクロ


 人を色分けするのは、あまりよろしくありませんが、ボンベの場合は取り違えると危険ですので、中身によって色分けされています。例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンは灰色。酸素は黒色。水素は赤色というように。

 ある研究室では、研究室の外に置いたボンベから窒素ラインを研究室の中に引き込んで使用していた。ある日、手の空いている学生が外に出てボンベの交換をした。それから1時間ほど経った頃、異変が生じ始めた。
 別の学生が金属カルボニル化合物を窒素雰囲気下で滴下したところ、フラスコの中で試薬が発火したのである。いつも使い慣れている試薬を、いつもと同じように使ったにも拘らずである。そして、ボンベを替えた当の学生が反応を仕込もうとした時、突然火を吹いて前髪がこげて焼けてしまった。立て続けに起こった2つの様子を見て、「これはおかしい!」と思った先生が外に出たところ、窒素が繋がれているべきところに黒いボンベが繋がれてあった。その日は、窒素ラインを真空ポンプで引いては窒素置換するなどの復旧作業をしなければならず、それらの作業を終えた頃には研究室の学生全員が疲れ果てていたのであった。

灰色と黒色を間違えてしまったことが不思議でたまりませんが、大事故に繋がるような爆発が起こらなかっただけでも良しとしなければなりませんね。