明日は我が身


 実験に失敗はつきものです。時には周りの人に迷惑をかけることもありますが、本人も意図してやっている訳ではありません。周りの人もそのことを理解してあげる必要があります。

 研究室で実験を始めたばかりの4回生がピリジンを使っていた。使用している本人が最も臭いと感じているのであるが、自分の実験なので我慢して使っていた。しかし、我慢できなかったのは、隣の実験台を使用している同学年の学生であった。同期である気安さも手伝って、「なにー!このにおい!」「たまらんわ!」「こっちまで気分が悪うなるわ!」などなど。その口撃はとどまるところを知らなかった。それを見かねた先輩が「そない言うたるなや。自分かて臭い試薬を使うかもしれんのやし。」と言うたが、学生は意に介さず、文句を言い続けていた。当の学生は「他の人に迷惑をかけているのは事実やし」と思いながら、においと罵声の両方に耐えていた。
 それから1ヶ月経ったある日、攻撃していた学生がピコリン(メチルピリジン)を使うことになった。当然ながらピリジンと同様のにおいがするが、分子量が大きくなった分揮発性が低く、まとわりつくようなにおいはなかなか去ってくれないという違いがあった。使い始めた途端、研究室中からブーイングが上がった。特に前回ピリジンの件で責め立てた学生からの声が大きかった。しかも、においがすぐに抜けてくれない分、耐えなければならない時間が長かったのであった。

臭い試薬はできるだけにおいを漏らさずに使うことが基本です。中には、自分だけくさい思いをするのは嫌だと思って、わざと撒き散らす人がいますが、これは問題外です。しかし、漏らさないように努力をしていても漏れることはあります。そのような時はこのホームページのように優しく見守ってあげましょうね。