キラルな環境


 通常、何も工夫をせずに反応なり分離処理を行なってもエナンチオマーの一方を優先して得ることはできません。しかし、キラルな環境を用いれば、それも可能になります。

 ある学生がキラルなアミンを使った実験を行なっていた。ラセミ体とは異なり、高価であるので、無駄遣いをすることもできない。このアミンは揮発性が高いために、アンプル中で保管されていた。学生は何事もなく、そのアミンを使った実験を終え、残ったアミンを再びアンプルに封じた。
 1週間ほど経ったある日、学生が同じ実験をしようと思ってアンプルを取り出してみると、そこにはあるはずのアミンが全く残っておらず、空になっていた。アンプル封入の際に、閉じ切れておらず穴からアミンが揮発してなくなってしまったのであった。「この間、周辺で行なわれた実験では、光学活性な生成物が得られていたかもしれない」というしょうもないことを考えながら、先生にどのように言うて買ってもらおうかと考えていたのであった。

アンプルを封じた後、小さな穴が開いていることがあります。十分に冷やした後、逆さにするなどして、漏れがないかどうかを確認しておくことが必要です。ちなみに熱い時にひっくり返すとガラスが割れますので、ご注意を。