一斉蜂起


 反応には激しく発熱するものがあります。自らが発した熱で、次の反応が促進されますので、ある程度の発熱が起こりますと制御不能に陥ってしまいます。そのような反応を行なう時は反応溶液を十分に冷やす必要があります。

 ある学生がある化合物を合成していた。原料を溶媒に溶解させた上に冷却した上に無水酢酸をゆっくり滴下するというものであるが、発熱反応なので反応容器を冷却する必要があった。学生はしっかりと冷却し、無水酢酸を慎重に滴下した。十分に冷却していたお陰で、特に目立った変化を観察することなく、全ての無水酢酸を滴下し終えた。
 学生は滴下の段階を乗り越えたことに安心し、反応溶液を室温に昇温した。しばらくすると、容器の中で激しい反応が起こり始めた。学生は慌てて冷やしたが、その甲斐むなしく、反応溶液が玉入り冷却管を駆け上り、上から噴き出した。その後、反応は治まったが実験室中、酢酸のにおいが充満してしまい、学生は他の人達に迷惑をかけたことを謝って回ったのであった。

発熱反応で冷却するのは正しいのですが、冷やし過ぎますと肝腎の反応が進行しなくなってしまいます。この場合は、滴下しても反応が起こらずにただの混合物が得られたのみであったのでしょう。その後、温度を上げていきますと、大量の試薬を一気に加えたのと同じ状態になり、反応が暴走してしまったと思われます。何事も適度に行なうことが大切ですね。