疑問解消


 実験を始めた頃は、何かと気になるものです。経験値が少ないから当然なのですけれども・・・。

 ある学生が溶媒を蒸留により精製していた。沸点は高くなかったので、減圧する必要もなく楽な蒸留である。初留を採ったフラスコの中を見ると、少し黄色く着色していた。溶媒は無色のはずであるのに色が着くということは、何か不純物が含まれていることを意味するので、先生のところに報告に行ったが、忙しそうにしている先生は「そんなん気にせんでええから、はよ反応を仕込めよ」と取りつく島がなかった。
 学生は「こんな溶媒を使うて、反応に悪い影響が出んやろか」と気になってしょうがない。初留の入ったフラスコをエバポレータに取り付けて濃縮を始めた。「もしかしたら新しい研究テーマが見つかるかも」と思いつつ、フラスコの中を覗き込んでいたが、結局何も残らなかった。先輩にそのことを相談してみると、「初留で出てくるような低沸点成分やったら、減圧濃縮で全部飛んでいってしまうやろ」と言われて、自分が無駄な作業をしていたことに気付いたのであった。

研究をするには、何にでも疑問を持つことが大切です。この学生も一歩間違えれば大化学者になれるかもしれませんね。