似て非なるもの


 パンダとレッサーパンダ、アリとシロアリ、サメとコバンザメなどなど、名前は似ていても全く異なるものが自然界には沢山あります。試薬の名前でも全く異なるものであるのに、似たような名前を持つものがあります。

 ある学生が文献を見ながら実験をしていた。しかし、最後の再結晶の段階でどうしても結晶が出てこない。色々と原因を考えてみたが分からなかったので、先生に相談をした。
「エーテルで再結晶してるんですけど、結晶が出てこないんです」
「その化合物って、エーテルで再結晶してたか?」
「はい、ちゃんと論文に書いてありますよ」
「ちょっと見せてみ・・・エーテルやなくて石油エーテルやんか」
「えっ!エーテルと石油エーテルって違うんですか?石油の意味が分からんから無視してました。」
 その後、学生はヘキサンを溶媒に用いて、無事に再結晶を終えたのであった。

石油の留分のうち、エーテルと沸点の近いもの(ペンタンが主成分)を石油エーテルと言います。しかし、最近は使うことも少なくなってきたので、学生がその言葉自体を知らなかったとしても仕方がないですね。