リハビリ


 実験からご無沙汰している年配の先生が、学生に手本を見せようとして失敗してしまうことがあります。これは頭でイメージしているようには体が動いていないからであると思われます。

 ある学生が企業から内々定をもらい、就職活動を終えた。当初は就職活動の合間を縫って実験もできるかと思っていたが、まとまった時間が取れないのと気分的に落ち着かないので、実験をすることもできず、その期間は完全なオフ状態であった。しかし、そのような状況も終わったので、思う存分実験をすることができるようになり、学生は意気揚々と実験室に向かった。
 学生は手始めに、原料合成を行なった。この実験では金属試薬を使い、発火する危険性もあったが、通い慣れた道であるので、何の心配をすることもなく、いつも通り実験を行なった。しかし、原料を吸引ろ取し用とした際、乾燥した試薬が火花を発しながら燃え始めた。近くに置いてあった洗瓶で水を掛けて鎮火したが、学生はショックであった。しかも、沢山得られるはずの原料も、少量しか得られず、自分の実験勘がかなり鈍っていることを悟り、さらに落ち込んだのであった。

久し振りに実験をする時は、いつも通りにやっているようでも、注意力が散漫していてどこか抜け落ちていることがあります。実験勘を取り戻すまで、焦らずゆっくりとリハビリをした方が良いですね。