不平等


 世の中には不平等なことが沢山あります。むしろ、平等の方が少ないかもしれません。試薬の世界も同様で必ずしも平等であるとは限りません。

 ある学生が混合物のTLCをチェックしたところ、2種類の大きなスポットが観察された。週末の夕方であったこともあり、週明けにカラムによって分離することにした。カラム処理をして分けたフラクションのTLCをチェックしたところ、反応混合物で見られていたところにスポットは見られず、より高い位置に新たに観察された。カラムの中で構造が変わったのかもしれないと思った学生は、「何か面白い骨格のものができたかも」という期待も込めて濃縮を行なった。しかし、そのNMRには意に反して、混合物中に見られたシグナルが現れているのみで、骨格が変わった形跡は全く認められなかった。
 納得のいかない学生は、先生に尋ねてみた。先生からは「TLCの展開溶媒にヘキサンー酢酸エチルの混合溶媒を使うてへんか?」という逆質問をされた。「そうです」と学生が答えると、「ヘキサンの方がより多く気化したから、混合溶媒の極性が高くなったんやわ」と説明してくれたのであった。

週末を挟んだために、調製しておいたTLCの展開溶媒が気化して量が減ったのですが、ヘキサンも酢酸エチルも同じスピードで同じ比率で気化するということはあり得ないです。面倒でも、使う度に調製し、長期間置いておかないことが大切ですね。