いっぱし


 最近は高校でほとんど実験を持ていないという学生も多くいます。中には、大学での学生実験が人生で初めての実験となる学生もいます。

 ある学生は学生実験を前に気合が入っていた。頭の中で何度もシミュレーションを重ね、自分の実験技術は完璧であると思っていた。学生実験の初回は、分液漏斗による抽出で混合物を分離するという簡単なものであった。学生は教科書通りに200回を数えながら分液漏斗を振り、静置するのも正確に10分間測った。コックを開いて水層を出す際も、きっちり分けることに拘った。傍を通りかかった先生が「どうせその水層は、また分液漏斗に入れて振るんやから、そんなにきっちり分けても意味がないで」と声を掛けたが、学生は「いや、この1滴を大事にしないといけないんです」と言って譲らない。各班が順調に実験を終えて帰っていく中で、実験室にはその学生が1人残ったが、気にする素振りも見せず自分のペースを貫いていた。
 先生がふと学生の実験台を見ると、そこには昨年の学生実験で汚れたままのフラスコが使われており、その汚れがいくらか有機層に溶け出して黄ばんでいた。また、使う前に軽くその容器を水洗いしたらしく、有機層の底には水が溜まっていた。先生は思わず「他にもっと拘らなあかんところがあるんちゃう」と言ったのであった。

実験には慣れが必要です。自分では完璧だと思っていても、結構注意が行き届いていないこともあります。先生や先輩の助言には、素直に耳を傾けるようにしましょうね。なりません。そして、普段と違う様子が見られたら、些細なことでも構いませんので、先生に報告をするようにしましょうね。