げんまん


 研究室では実験をすることが重要ですが、それ以外にも先輩後輩との付き合いを通じた人間関係の構築や社会生活の基本を学ぶとことも大切です。

 ある学生は少し焦っていた。先輩との約束の時間が迫っているが、今すぐにやらなければならない実験も目の前に控えていたからである。学生は時計を見て、実験の段取りを考え、ギリギリ間に合うと判断した。実験は思いの外順調に進行し、あとは合成した化合物を減圧乾燥するのみとなった。しかし、いつもは真空ポンプに繋がれている長い耐圧ゴム管が短いものに置き換わっていることに気づいた。誰かが必要になって持って行ったのである。残されているゴム管は学生が使うには短すぎるので、もう1本の短いゴム管を持ってきて、ガラス管で接続することにした。ガラス管をゴム管に挿そうとしたその時、ガラス管が折れて指がザックリと切れてしまった。出てくる血を止めながら、乾燥をする段階まで辿り着き、先輩との約束の時間に間に合わせた。
 血を吸って真っ赤になったティッシュで指を覆いながら慌ててやってきた後輩学生を見た先輩は「そこまで急がんでも良かったのに」と言いながらも、「可愛い奴や」と思ったのであった。

ガラス管をゴム管等に挿す時は、できるだけ両手の間隔を狭くしてもたなければなりません。手が離れていると、力が斜めにかかって折れてしまうことがあり、指を切ってしまうからです。場合によっては神経まで切ってしまうこともあります。慌てて実験をしてもろくなことはありません。時間と気持ちの余裕を持ってするべきですね。