非日常的な静寂


 実験室では、真空ポンプやらドラフトやらその他の機械の音に加えて、人の話声も混じっており、結構うるさいものです。でも、慣れというのは恐ろしいもので、そのような音が気にならなくなってしまいます。

 ある日、実験室にいてた学生達がそれぞれの用事のために出払った。その結果、ある学生が一人実験室に残る状況になった。一人なので、色々な器具とか機械を使いたい放題になり「これは快適やわ」と思いながら、自分の実験に勤しんでいた。ふと気づくと、実験室が妙に静かであることに気づいた。他に人がいないので、話声が聞こえないのは当然であるが、静か過ぎて落ち着かない。不安に思った学生は、自分がやってきた実験操作を思い起こしてみた。そして「あっ!」と叫んで、真空デシケーターのところへ行くと、そこには油まみれになったサンプルが静かに佇んでいたのであった。  

機械類は長時間運転していますと、熱くなることがあります。そして、それが過ぎますと安全装置が働いて運転を停止します。この学生の場合、真空ポンプが何かの原因で止まったのでしょうが、デシケーター内が減圧状態であるため、ポンプからオイルが逆流してきて起こった悲劇です。間にトラップを挟んでおけば、大丈夫だったのですが。普段行なっている操作でも、ほったらかしにしておかずに、時々様子を見るべきですね。