ブイ


 通常、ガラス器具は洗って使用します。水や溶媒で汚れを洗い落として使うこともありますが、アルカリ洗剤や酸化剤の入ったバスに浸けておいて、そこから取り出して水洗いをしてから使う方法もあります。

 ある学生が反応を仕込もうとしていた。試薬の入ったナス型フラスコに溶媒を入れたところ、溶媒が黄色く着色した。普段とは違う様子に驚いた学生は、先生に相談をした。
「この試薬は溶媒と反応してしまったんですかねえ?」
「そんな訳ないやろ。溶かしただけやのに。フラスコが汚れてたんちゃうか。」
「ちゃんとバスに浸けて洗ってますよ。」
 先生は「ほんまか?」と言いながら、バスの蓋を開けた。すると、そこにはブイのようにナス型フラスコがプカプカと浮いていた。空気が入ったままバスに浸けたので、フラスコの内面が洗剤に触れていないのである。そのことを注意された学生は、フラスコを洗い直し、一から実験をやり直さなければならなかったのであった。

「実験は好きやけど器具洗いは面倒で嫌い」と思っている人が多くいますが、器具洗いも実験の一部であり、手を抜いてはいけないところです。面倒くさがって手を抜いたりしますと、後でもっと面倒くさいことになりますので、丁寧に器具を洗うようにしましょうね。