ローカルルール


 3年生になりますと進学か就職かを決めなければなりません。企業で働くと言ってもイメージできないのは仕方がないのですが、それは人から聞いてもネットで調べてもやはり分からないものです。そんな時、講義のない9月に開催される工場見学は、実際に見ることができる良い機会ですので、大いに役立ちます。企業側も来訪した学生達にできるだけ会社のことを知ってもらおうと、説明に熱が入ります。

 ある大学の化学系の学科の学生達が、とあるガス会社に工場見学に行った。パイプラインなどを一通り見た後に会議室に通され、社員さんから説明を受けた。社員さんが「ここでベンゾールが・・・」と説明をし始めると、学生達がざわめき始めた。「ベンゾールって何や?」「オールというんやからベンゼンにOHが付いたもんちゃうん」「でも、それやったらフェノールって言うやろ」「そやなあ」などと分からないもの同士が相談してもやはり分からない。そこで、学生の1人が引率の教授の先生に尋ねた。しかし、返ってきた答えは「亀の甲や!」の一言。
 学生達は何が何だかさっぱり分からず、もう少しこちらの立場が分かってくれそうな准教授の先生に尋ねた。「ベンゾールというのはベンゼンのドイツ語や。ここはそういう習慣があるんやろな」という極めて明快な答えを聞いて全ての謎が解けたが、それと同時に社員さんの説明も終了した。社員さんが汗だくになって説明をしてくれたにも拘らず、会場にいた学生は誰一人、理解をすることができなかったのであった。

普段使っている言葉を、他の人が必ずしも理解しているとは限りません。人に説明をする場合は、できるだけ一般的な表現を使うことが大切ですね。