意思不通


 学会発表はプレゼンテーションだけでなく、そのあとの質疑応答までを含めます。しかし、学生がよくする失敗は、プレゼンテーションが終わった時点でほっとしてしまい、集中力が切れた状態で質疑応答するために噛み合っていない会話をしてしまうことです。

 ある学生が学会発表に臨んだ。大きなホールでの発表は初めてであり、少し緊張をしていた。唯一の救いは朝一番の発表であるために、緊張の時間が短くて済むということであった。実際にプレゼンテーションを始めると緊張感もなくなり、無事に終えることができた。質疑応答も会場からの2つの質問にも無難に答えた。最後に座長が質問をしたが、途切れ途切れで何を言うているのかが分からない。何回か聞き直してようやく答えたものの、それはあたかも理解できずに発表している学生のようであった。次の発表者のプレゼンテーションを会場で聴いていると、やはり座長からの質問は聞き取りにくかったみたいであるが、その発表者は座長の横に移動して質疑応答をすることで対応して、少し差をつけられた感があった。
 座長の先生が壇上から降りてくるやいなや、ホールの会場担当者のところに行き、「発表者の言うてることが聞こえへんのやけど」と言うと、係りの人は平然と「そうですよ。舞台上でお互いの声が邪魔しないように壇上の人のマイクの音が聞こえない設定になってるんです。」と答えた。座長の先生は「それでは学会にならへんから、すぐに聞こえるように設定を変えて下さい!」と言い、その後の学会は問題なく運営されたのであった。

会場係の人は親切のつもりでやったことなのでしょうが、それがむしろ邪魔をしてしまうこともあります。準備をする際は、その辺りのこともしっかりと確認をしておくべきでしょうね。それにしても発表者の話していることが聞こえない状態で座長をした先生が一番大変だったのではないでしょうか。