風水


 二人が同じように実験していて、一人は上手くいくのに、もう一人は全然良い結果が得られないということがあります。学生たちの実験技術の問題もあるでしょうが、実験台を入れ替えてみると、逆の立場になることがあります。

 ある学生は意気揚々と実験を進めていた。仕込んだ反応がいずれも室温で効率良く進行して、高収率で生成物が得られるからである。ただ、そのような時に問題になるのが、再現性である。誰がやっても同じように反応が進行しなければ意味がない。そのような折、先輩がやってきて、その学生の反応を使ってみたいと言うてきた。実験方法を教えてもらった先輩は、早速反応を仕込んでみたが、全く進行しない。
 焦ったのは、その結果を聞いた学生である。やり方を聞いても、間違いらしきところはない。実際に学生が先輩の実験台に赴いて、実験をしてみるとやはり反応は進行しない。学生は「先輩の実験台がある方角が悪いんちゃいます?」と科学的でないことを言いだす始末。それを聞いた先輩は「そんなこと言うんなら、お前の実験台でやらせてくれよ」と言いながら、学生の実験台の前に立った瞬間、あることに気づいた。「ここの実験台は暖房の吹き出し口の前やから、室温というても暖かいんやで」自分の実験台に戻った先輩が、反応系を少し加熱すると、後輩学生と同様に効率良く反応が進行したのであった。

反応条件で室温と書いてあっても、国によって異なります。また冷房したり暖房したりしても変わってきます。注意しなければなりませんね。