待てど暮らせど2


 エバポレータで減圧濃縮していますと、溶媒がなくなるにつれて粘度が高くなりドロっとなることがあります。こういう時は溶媒が完全に抜けきっていないことが多いので、少し長めの時間、減圧すれば解決できることもあります。

 ある学生がカラムで分離したフラクションの濃縮をしていた。TLCでチェックしても1スポットしか見られなかったので、かなり純度は高いはずである。目的の化合物は固体であるが、固化した時に内部に溶媒が残っていると、破裂したようになってフラスコの中に撒き散らされることもある。そうなっては大変と思い、学生はエバポレータに取り付けられて回っているナス型フラスコを眺めていた。
 フラスコの中はドロっとした状態であり、なかなか固体が析出してこない。学生は「まだ溶媒が残ってるんや」と思い、水浴の温度を上げた。それから待つこと1時間。フラスコの中には固体がまだ現れていなかった。待ちくたびれた学生はついに諦めて、フラスコをエバポレータから外した。そしてそのフラスコを実験台の上に置いた瞬間、固体が析出し始めた。その時初めて、固体の融点が低いことに気づいたのであった。

いくら固体の化合物であっても、融点以上に加熱しますと液体になります。とっくの昔に濃縮は終わっていたのですが、この学生はそれに気づかずに延々と待っていたのです。それにしても1時間も待つ前に気づくべきでしょうね。