王将


 実験をしていますと色々なことを同時進行で行なわなければなりません。そのような場合、重要になってくるのは作業の手順をいかに効率良く組み立てていくかということです。

 ある学生が反応を仕込んでいた。他にも反応の後処理やカラム処理なども行なわなければならず、「早く仕込まんと」と焦っていた。反応容器に触媒となる金属試薬を秤量した後、反応容器の蓋を開け、窒素をオーバーフローさせて容器に空気が入らないようにしながら配位子を加えるという手順である。学生は配位子を秤り取って、反応容器が設置してあるドラフトのところに行った。その時、反応容器の蓋が開いていないことに気づいた。
 学生は「ちっ!」と舌打ちをして、配位子を乗せた薬包紙を置いてドラフトの扉を開けた。その瞬間、ドラフトの吸引によって、薬包紙が舞い上がり、配位子は埃に紛れてしまった。学生は「ふ〜け〜ば〜、とぶよ〜な〜」と口ずさみながら、配位子を再度秤らなければならなかったのであった。

焦って実験をしている時は失敗をする確率が大幅に上がります。気持ちに余裕を持って、しっかり手順を考えながら実験をしなければなりませんね。