wの悲劇


 ある程度、実験に慣れてきますとルーティンで行なうようになります。そのような状況では、自分の実験が間違えているなどと全く思ってはいません。

 ある学生が悩んでいた。あれこれ条件検討をしても収率が50%を超えてくれないのである。そこで、先生に相談に行ったところ、実験手順を一からチェックをすることになった。しかし、学生の説明を順番に聞いても、おかしいと思われるような点が見当たらなかった。学生も間違えているとは思っていないので、説明にも自信が満ちていた。そして、最後の収率を出す段階について「どうやって計算してるん?」と尋ねると、学生は「当たり前のようなことを訊かんといてくれ」という顔で「普通に生成物のモル数を原料のモル数で割ってます」と答えた。先生は「この反応は2量化やから、最後に収率を2倍せなあかんやろ」と言われて、学生は「あっ!」と思わず声を出した。すでに反応条件の最適化が終了したのであった。

自分が間違えているはずがないと思っていると、いつまで経っても問題が解決できないことがあります。たまには先入観のない人の目で見てもらって、自分の実験なり、計算なり、考えに穴がないかどうかをチェックしてもらうことは必要ですね。