能ない鷹は爪なくす


 フラスコのスリの部分にはフック(通称、爪と言います。一般的に使われているのかどうかは知りませんが)が付いているものがある。これは冷却器などに取り付けた際に落ちないようにバネなどを引っ掛けておくものです。でも、そういう用途に使わないのであれば、寧ろ邪魔な存在になることもあります。

 ある学生がナス型フラスコをクランプで固定しようとしていた。クランプのネジを締めていくと「パキッ」という音がした。見ると爪が折れていた。「しもうた。こっちに爪が出てるのに気づかんかったわ。でも、割れてしもうたんはしゃあない。」と思い、廃ガラス入れに爪を捨てた。
 そのナス型フラスコを使って反応を仕込んだところ、非常に効率良く進行し、反応混合物のNMRを見ても不純物のシグナルが見られず、ほぼ定量的に目的の生成物が得られていることを確認した。そこで、「念のために」と思って、ナス型フラスコの重量を計った。しかし、そこで得られた値は半分にも満たないものであり、愕然とした。学生は自分の実験に自信があったので、何が良くなかったのかを思い返してみた。その時、フラスコの爪が割れて捨てたことを思い出した。「あっ、爪の重さの分だけ軽くなってるんや!」と思い、廃ガラス入れのところに行き、漁ってみたがどれも似たような形のガラスばかりで、見つけることはできなかった。結局、他のフラスコに移して重さを計り直さなければならなかったのであった。

小さいからこれは捨ててもいいと思うこともありますが、小さいなりに重要な働きをしていることもあります。捨てる前に一呼吸おいて、捨てても構わないものかどうかを考えるようにしましょうね。