もったいない


 大きな大学の一部の研究室を除いて、大学の研究室は一般にお金がありません。しかし、ガラス器具も試薬も何もかも高いので大学の教員は色々と節約と工夫をしながら、そして予算の残高を眺めながら日々を過ごしています。

 ある研究室の先生が退官することになり、研究室を明け渡すために整理をしていた。そして、周囲の研究室の先生に「欲しいものがあったら何でも持って行ってもらっても構わんで」と声を掛けた。その呼び掛けに応じて、周りの研究室の教員が学生を引き連れてハイエナの如く集まってきて、色々と物色を始めた。ある学生が部屋の隅に置いてあるデュアー瓶を見つけた。それを見た先生も「このガラス製のは結構高いからな〜」と言いながら喜んでいた。
 デュアー瓶を持ち帰った学生は早速、トラップを差し込み液体窒素で満たして、減圧蒸留を始めた。しばらくは何事もなく蒸留が進んでいたが、突然、「ボンッ!」という大きな音とともに、デュアー瓶が破裂し、トラップと蒸留装置と一緒に実験台から落ちた。床にはガラスの破片と蒸留していた試薬と液体窒素が落ち、まさに地獄絵図の様相を呈していた。結局、タダでもらったデュアー瓶で蒸留装置が壊れてしまったので、小さな得で大きな損をしたのであった。

ガラスのデュアー瓶は魔法瓶になっていて、熱が伝わりにくいように真空になっています。小さな傷でも簡単に割れることがありますので、十分に気をつけなければなりません。ましてや覗きこむことは絶対にすべきではありませんね。