アタック No.1


 有機合成の実験で難しい操作にカラムクロマトグラフィーがあります。とはいえ、シリカゲルを均一に充填することができれば、半分は成功したのも同然です。

 ある学生がカラムの充填を行なっていた。その学生が初めて充填した時は、しっかりと詰めていなかったために、表面を乱さないようにと海砂を入れるとそれが沈み込み、表面を逆に乱してしまうという失敗をしてしまった。今回はその反省を踏まえて、しっかりと詰めることにした。通りかかった先生が「横から叩くと詰まり方に偏りができてしまうから、上から軽く叩くとええで」というアドバイスをくれた。学生は「大丈夫です。バレー部やったんで、手首のスナップには自信があります」と答えた。シリカゲルをカラム内に入れ終わると、最後の仕上げに学生は上から力強く叩いた。その結果、シリカゲルはしっかり詰めることができた。
 その時、向かい側の実験台で実験している学生が大きな声を出した。何事かと思って行ってみると、再結晶をしようとして溶液が固体で満たされていた。静置してゆっくりと結晶を成長させるつもりが、先ほどの衝撃で一気に析出したのである。そんなに急に析出したのでは、きれいな結晶が出るはずもなく、その学生は他の静かな部屋に移動して再結晶をやり直さなければならなかったのであった。

なんでも力任せにする人がいますが、必要最小限に留めるということを学ばなければなりませんね。特に今回のように他の人に迷惑をかける行為は慎まなければなりません。