ファッション


 学生にはファッションに興味を持つ人も持たない人もいます。中には結構拘りが強い人もいます。当然のことながら、それは個人の自由なので問題はないのですが、実験着にまで拘りを持つと「どうかな?」と思うこともあります。

 ある学生が新しく買ったブーツを見せて他の学生たちに自慢をしていた。「やっぱり足元にはしっかりお金をかけんとあかんから。この色もええやろ。」などなどなど、その自慢はとどまることを知らなかった。ブーツ談議もひとしきり終え、実験に取り掛かった。学生はブーツを履いた白衣姿を鏡に映し、「なかなかカッコええやん」と悦に入っていた。その姿を見た先生は「実験する時くらい靴を履き替えたらどない」と注意したが、学生は「ふん、先生はファッションのことが分かってへんわ」とどこ吹く風であった。
 その日の夕方、先生が廊下を歩いていると、実験室の方から悲鳴が聞こえた。慌てて駆けつけてみると「え−!いやっ、いやっ、いや−!!なに、これっ!!!なんでなん!!」などとわめき散らしている学生の姿がそこにあった。使っていた溶媒の飛沫がブーツにかかって、斑点ができていたのである。しばらくすると、汚いスニーカーに履き替えた学生が意気消沈して実験をしていたのであった。

実験には相応しい服装があります。汚れても構わない服装でずるべきですね。