きのこ


 レストランに行けば少食の人のためにハーフサイズがあるように、実験器具にも小さなスケール用にハーフサイズの器具が売られています。

 ある学生が実験室の整理をしていた。普段あまり使っていない引き出しの奥から小さなサイズの実験装置が出てきた。普段使っている器具の半分くらいのサイズであるが、試薬や溶媒の量を考えると、このサイズの器具でも使えそうである。学生は早速にその器具を使って反応を仕込んだ。固体の試料を入れ、減圧乾燥した後にアルゴン雰囲気にした。口にはセプタムラバーを挿して準備完了である。そこに注射器で溶媒と液体の試料を注入すれば、反応開始である。前を通った女子学生は「あ〜、可愛い〜」と言うてくれたりして、学生は少し鼻の穴を広げていた。反応そのものは、室温で終夜撹拌する実験であったので、放ったまま帰宅した。
 翌朝、反応の後処理をしようと思って近付くと、何やらキノコのような形のものが見えた。それは溶媒によって膨潤したセプタムラバーであった。そして、反応容器の中は干上がった状態で回転子がクルクル回っているのみであった。結局、いつも使っている大きな器具を用いて、再度同じ実験をしなければならなかったのであった。

今回はセプタムラバーと溶媒の距離が近かったために、溶媒の蒸気が全てゴムの中に取り込まれてしまったようです。見た目の可愛さではなく、必要な大きさの器具を用いて実験を行なうべきでしょうね。