実測


 実験をしていますと、いろいろな値を測定します。データ処理をするうちに誤差が生じたりすることもありますので、実測値が最も説得力があります。とはいえ・・・

 ある学生が先生に実験の報告をしていた。「この反応を追跡しましたところ、TLCでRf値が0.50の原料が消失して、0.46の位置にスポットが現れました。その後、そのスポットの代わりに0.54のRf値を持つスポットが現れました。」先生は「それは原料が消費されて、違う骨格になった後に、さらに構造が変化したということか?」と尋ねた。「Rf値がこんなに変わっているんで、そうやと思います。」「じゃあ、いっぺん反応混合物のNMRを測定してみ。」
 しばらくして戻ってきた学生は浮かない顔をしていた。「NMRを測定したんですけど、原料に戻っていました。」それを聞いた先生は「TLCのRf値って、どうやって計算してる?」「スポットが上がったスポットの位置をプレートの長さで割っています。」「溶媒がどこまで展開されたかはチェックしてへんの?」「そこはあんまり気にしてないです。」暫くの間、先生は言葉を発することができなかったのであった。

Rf値は溶媒が進んだ距離に対するスポットが進んだ距離の比ですので、展開溶媒がどこまで上がったかはちゃんとチェックしておきましょうね。