寝る子は育つ


 最近は小さいスケールの実験をすることが増えましたし、脱水溶媒も安く手に入るようになりましたので、蒸留をすることがめっきり減りました。きっちりと蒸留を行なうには、温度計を見ながら、初留、本留、後留と切り替えなければなりません。

 ある学生が2回目の蒸留をしていた。1回目の蒸留では、温度計を見ていなかったために分離すべき成分を見逃してしまい、先生に怒られたので今回はリベンジマッチである。実際に加熱を始めると、発生した蒸気が温度計に達するとともに、温度計内の赤いアルコールが伸び始めた。しかし、目的とする沸点で止まると思われたが、それを超えてしまいさらに高い温度で停止した。「これは目的物なんやろか、それとも違うんやろか」などと思っている間に、フラスコ内の全ての液体が受器に移ってしまった。結局、初留と本留を分離することができなかった。
 そこで、先生に相談したところ、温度計を見た先生は「アルコールが切れてるやないか」と怒られた。理由も分からず呆然としていると、先生は引き出しを開け、「温度計はこうやって横向きに保管していると、切れてしまうんや。」と説明された。それから1時間ほどの間、学生は雑巾の上でトントンと温度計に衝撃を与えながら、温度計の修復をしたのであった。

一旦切れてしまいますと、温度計はなかなか元に戻ってくれません。普段から保管の方法に気をつけるべきですね。