人生の転機


 研究室で実験をしていて負う怪我で、最も多いのはガラスによる切り傷でしょう。欠けた部分で切ったりするのはしょっちゅうですが、時には大きな怪我をすることもあります。

 ある学生が、溶媒倉庫に溶媒汲みに行こうとした。空になったガロン瓶を片手に研究室を出るやいなや、ガラスが割れる音が廊下に響いた。床が濡れていることに気付かず、滑って転んだのである。
 研究室の人たちが慌てて外に出てみると、学生が手から血を垂らしながら呆然と立ち尽くしていた。先生がすぐに洗面所に連れて行って傷口を洗ってみると、傷は深くはなかったものの、割と長い傷が広がっていた。周辺を指で押さえて、ガラスの破片が傷の中に入っていないことを確かめた後、病院へ連れて行った。病院で処置をしてもらって一息ついたが、学生の手の平の運命線のあたりに傷が残った。学生は「この怪我でこれからの運勢が変わってしもうたら、どないしよ」と真剣に心配をしていたのであった。

ガラス器具は実験に不可欠のものですが、割れると恐ろしい凶器にもなります。取り扱いには十分に注意しなければなりませんね。