癒着


 ナス型フラスコと冷却管を繋ぎ止めるために、バネや輪ゴムを用いることがありますが、プラスチック製のジョイントを用いるのがやはり便利です。

 ある学生が再結晶をしていた。精製しようとする固体をフラスコに入れて、冷却管を差し込み、ジョイントで繫ぎ止めた。フラスコをオイルバスに浸けようとしたその時、フラスコがオイルバスの中に落下してしまった。ジョイントが割れていたのに気づかなかったからである。慌てて引き上げたが、フラスコ内の固体はすでに油まみれになっていた。多段階反応の最終生成物だけに、簡単に諦める訳にはいかない。
 そこで、学生はフラスコの内容物をカラムクロマトグラフィーで分離することにした。化合物は極性が低いからヘキサンで展開しても真っ先に出てくるはずである。最初の方のフラクションを濃縮したところ、そこには油まみれの化合物が残っていた。学生は「こうなったら癒着やなくて油着やな」と呟いて、それ以上足掻くのを諦めたのであった。

ジョイントが割れていることに気づかずに、落としてしまうという失敗はよくします。見つけた場合は捨てるようにしましょう。油も非極性化合物ですので、油汚れはヘキサンなどで拭き取るとよく落ちます。そんな似たものを分離しようとするのは至難の技ですよね。