押し手と引き手


 デシケーターは蓋と本体がくっ付いて開けることが困難な場合があります。そのため、すり合わせの部分にグリースなどを塗るのですが、やはり開けにくくなることが起こるものです。

 ある学生がデシケーターで減圧乾燥していたサンプルを取り出そうとしていた。しかし、蓋はびくともしない。そこで、傍にいた先生に助けを求めた。先生自身、かつて学生たちの前でデシケーターを開けようとして、蓋が飛んで行き割ってしまった経験があるので、今回はドライヤーで温め、グリースの流動性を高めてから開けることにした。
 しばらく温めていると、動きそうな気配がしてきた。そこで、先生が左手で本体を抱えながら、右手で蓋を押し出した。なかなか頑固で動かなかったが、努力の甲斐があって少し動き始めた。「もう少し」と思った瞬間、本体が脇を通り過ぎて床に落ち大破した。右手には相方を失った蓋が残されているのみであった。

こういう場合は実験台の上ではなくて、床に置いて作業するべきですね。そうすれば、台の上から落ちる心配はありませんので。