油であぶら汗


 天ぷらを揚げている時に、水滴が付いていたりしますと、パチッと油がはねることがあります。油の中で水が沸騰しても行き場がないので、はじけているものなのですが、俗に「水の唐揚げ」と呼んでいます(私の周辺だけかもしれませんが)。

 ある学生が冷却管を取り換えようとした時、下に置いている油浴に冷却水が入ってしまった。こういうことはしょっちゅうなので、いつものようにスポイトで水を吸い取って除いた。目に見える程度の大きな水滴が無くなったことを確認して、アルミホイルをかぶせて100 ℃以上に加熱して、残りの水をとばしてしまうことにした。しばらくすると、ボコッ、ボコッという音がし始めた。しかし、いつもより、その音が激しいようである。後でわかったことであるが、油の温度分布を生じないように回転子で撹拌する際、アルミボウルが削れないようにガラス板を底に敷いていた。スポイトで水を吸い取った際、学生はガラス板の下に水が溜まっていることに気付いていなかったのである。
 なかなか止まる気配を感じない音に、学生が不安を感じ、先生を呼びに行った。先生が来た頃には、油が飛び散らないように被せているアルミホイルが持ち上がるほどの激しさであった。それを見た先生は「さすがにこれは危ないやろ」と思い、ヒ-タ-の電源を抜きに行った。その瞬間、油が天井まで吹き上げ、100 ℃以上に熱せられた油が先生の頭と背中の上に降ってきた。油を浴びた先生も、さすがの熱さに「うっ!」と呻き、あぶら汗が額を伝っていたのであった。

このような事故は起こさない方がもちろんいいのですが、先生は熱さと痛さを感じながらも「学生が油をかぶらなくて良かった」と思っているものなのです。