適材適所


 オゾンと言えば、オゾン層などの言葉から環境に優しいというイメージがありますが、実際にはかなり反応性が高く、その酸化力を活かして水道の高度処理水などにも使用されています。

 ある学生が合成した化合物の構造決定に行き詰まっていた。骨格に水素が少なくてNMRから得られる情報が少な過ぎるのである。先生に相談したところ、「オゾン分解して、二重結合を切断したら、その切れた骨格から構造が決まるんちゃうかな。そう言えば、うちの研究室にもオゾン発生装置があったと思うで。」と言いながら棚の奥から出してきた。しかし、装置と反応管を接続するテフロン管が見当たらなかった。学生は「これでもいいか」と思いながら、耐圧ゴム管を用いることにした。
 発生器を作動させると、反応管の中に順調にオゾンが吹き込まれていた。しかし、暫くすると泡の出る量が少なくなり、ついに出なくなった。不思議に思った学生が機械の裏面を覗くと、根元から切断されたゴム管が転がっていた。その時になって、ゴムも二重結合を持っていることに思い当たったのであった。

色々な材質の道具がありますが、それぞれの特性に応じた目的があります。適したものを適した場所で使うことが大切ですね。