取り違え


 最近の分析機器は多くのサンプルの測定が短時間でできます。その分、データの量もかなり多くなります。

 ある4年生の学生が測定したNMRの解析を行なっていた。しかし、思った以上に複雑であり、何処から手をつけて良いのかも分からなかった。いくら考えても埒が開かないので、先生に助けを求めた。先生は差し出されたチャートを見ながら、「こんなところにトリプレットなんか出えへんはずやのに、不思議やな」と言いながら考え込んでいた。
 そこへ通りかかった先輩がNMRチャートを見て、「なんで僕のNMRがここにあるんですか?」と尋ねた。念のために持ってきたチャートと見比べるとぴったりと合った。解析をしていた学生は訳が分からず、思わず「僕の化合物が先輩の化合物に変化したんですか?」と訊いた。先生と先輩は口を揃えて「そんな訳はないやろ!」と答えたのであった。

試料の数が多くなると、違うのを取り違えることもあります。また、測定済みのデータから他の人のデータを間違えて読み出してしまうこともあります。いずれにしても自分の試料とデータの管理はしっかり行なわなければなりませんね。