慎重かつ大胆に3


 実験器具を乱暴に扱ったり、データをいい加減に取り扱ったりすることは論外ですが、実験操作の中には慎重にやりさえすれば良いというものではないことがあります。

 ある学生が吸引ろ過をしようとしていた。慎重な性格の彼女は固体の析出した液を静かに漏斗に流し込んだ。最初は調子良くろ過をすることができたが、その内溶媒の落ちる速度が緩やかになり、最終的に止まってしまった。もちろん、ポンプによる吸引は続けたままである。
 いつまで経っても落ちないので、先生に相談したところ、「もっと思い切りよく流し込まなあかんで」とのアドバイス。新しい漏斗を用意して、言われたように吸引ろ過をやり直してみると、問題なくろ過をすることができたのであった。

固体は大きな粒子が沈んでおり、その上に小さな粒子が載っていることがあります。それを静かに流し込むと、小さな粒子でろ紙が目詰まりしてしまい、ろ過ができなくなることがあります。適度にかき混ぜて、大きな粒子と小さな粒子を一緒に流し込めば、ろ紙の目詰まりを防いでくれ、ろ過がスムーズに行なえます。時には思い切りよくする度胸も必要ですね。