水にあらず


 実験を始めたばかりの学生にとって、これまでの人生経験から、液体のものは全て水のような感覚で扱ってしまいがちです。有機溶媒しかり、液体窒素しかり。

 ある学生が実験の後片付けをしていた。冷却に使用していた液体窒素がまだ残っているのに気づかず、デュアー瓶を傾けた時に、体にかかった。しかし、体の表面を走るように流れていった。学生は「液体窒素って、そんなに冷たくないんやな」と思い、液体窒素を手の平の上に少し取って、転がして観察していた。
 しばらくすると、手の平に水膨れができて、痛み始めた。先生に報告して病院に行かなければならなかったのであった。

液体窒素は間近で見ると水のように見えるので、水を触っている感覚で扱っていたのでしょうが、実際には-196 °Cの液体です。知識としては知っていても、その危険度までは、なかなか分からないものですよね。