不適格者


 反応や抽出、分離など様々な場面で溶媒を使いますが、その時に選択する基準としては、溶解性や極性があります。しかし、もう1つ忘れてならないのが・・・。

 ある学生がフェノール誘導体を反応混合物から分離したいと思い、その方法として水酸化ナトリウム水溶液による抽出を用いることにした。学生は溶解させる溶媒として極性が高く生成物が溶解しやすい酢酸エチルを選択した。
 反応混合物の酢酸エチル溶液から水酸化ナトリウム水溶液で抽出し、酸性にした後、酢酸エチルで抽出を行なった。有機層を濃縮したところ、ナス型フラスコの中には予想したよりも多い量の液体が残っていた。学生は期待に胸を膨らませて、エバポレータから取り外したところ、酸っぱい臭いが鼻をついた。結局、さらにもう一度分離の操作を加えなければならなかったのであった。

この酸っぱい臭いは酢酸です。そう、水酸化ナトリウム水溶液で抽出している間に、酢酸エチルが加水分解されたのです。やはり溶媒としては反応しないものを用いるべきですね。