緊張・慎重・乱調


 研究室で初めて実験をするのは、これまでにない経験でどのように振る舞ってよいのか戸惑います。また、先輩の中に混じるというだけでも緊張してしまいます。

 ある学生が研究室で初めて実験することになった。ピリジンの過酢酸による酸化である。メスシリンダーにピリジンを測り取ろうとすると、慎重になり過ぎてこわごわ入れたために、メスシリンダーの外壁を伝って実験台にこぼれた。その臭いを初めてかいだ周りの学生が「くさい〜」と騒ぎ出し、窓を開けた。
 次に酢酸をメスシリンダーに測り取ろうとしたところ、外から吹き込んだまだ冷たい空気のために、酢酸が凍ってしまった。それを融かそうとドライヤーで温めてると、実験室には酢酸の臭いが広がった。ピリジンと酢酸の臭いが充満した実験室に耐えきれず、他の学生は次々と避難したが、学生は責任を感じて、なおも頑張り続けたのであった。

反応を仕込む際に、物性や性質を事前に調べます。しかし、どのような臭いがするかまでは書いてないですし、書いてあったとしてもなかなか分かりません。「百聞は一見に、いや一嗅にしかず」というところでしょうか。