色々


 学生実験では、色々と学ばせたい教員と、できるだけ手を抜きたい学生とのせめぎ合いの場でもあります。

 ある大学の学生実験では何週かに亘って無機イオンの定性分析を行なっていた。その最終回、テストも兼ねて未知試料の分析が課された。3種類の金属が溶解した試料を渡されるが、各班でその組み合わせはバラバラなので、隣の班の結果を参考にすることができない。
 ある学生は、この未知試料分析があることを忘れていて、夕方からバイトを入れてしまっていた。とにかくさっさと終わらせて、早く帰らなければならない。そこで、溶液の色から当たりをつけることにした。「青色をしてるから、銅イオンが絶対に含まれているはず」という堅い信念?で銅イオンの分析を始めたが、何回繰り返しても陽性を示すことがなかった。先生に「銅が含まれているはずなんですけど、なんで沈殿が出てこないんですかねえ?」と質問しても、「手順通り分析をしたらええんちゃう」と顔色を変えずに答えられるのみである。
 時間だけが無駄に過ぎていき、他の班では、正解を導き出して早々に帰る人達も出始めた。そのような状況になった頃、先生がおもむろに「試料溶液にはインクで青色に着色してるから、見た目で判断せんように」との衝撃的な言葉を発した。学生は色をなして、「そんなん卑怯や!」と抗議したものの、聞き入れられるはずもない。結局最初からやり直さなければならなかったのであった。

先生はこの手の学生に慣れています。加えて言うならば、先生もかつては学生であり、同じようなことを考えていました。経験豊富な先生の方が一枚上手(うわて)であったということですね。