キャパオーバー


 キャパとはcapacity(容量)のことです。単純に容器の容量を指すこともありますし、部屋の収容定員を指すこともあります。時には仕事の処理能力を指すこともあります。

 ある学生が吸引ろ過をしていた。セパレート型のろ過鐘の中に100 mLの三角フラスコを置き、上には桐山漏斗をセットしろ紙も敷いた。準備万端である。反応溶液にはきれいな固体が析出していた。反応で生成した化合物の結晶性が高いために、反応中に析出したものである。学生はその固体をどうしても取りたかった。漏斗に反応溶液を流し込むと、ろ紙を通過した液がフラスコの中に落ちていった。しかし、反応容器の壁に結晶がへばりついていて、その多くが取り出せないままであった。
 学生は溶媒を加えては漏斗にあけるという操作を繰り返し、ようやく結晶の全てをろ紙の上に移すことができた。しかし、結晶の周りには少しタール状の褐色の汚れが付いていた。少々ロスをしても綺麗な結晶を取りたかった学生はさらに結晶の上から溶媒をかけて、表面の汚れを洗い流した。ようやく綺麗な結晶が取れたと思ってふと眺めると、三角フラスコはとうにあふれており、ろ過鐘いっぱいに溶媒が溜まっていたのであった。

実験をする場合は、微視的な視点ではなく、ある程度俯瞰して全体の様子を把握しておかなければなりません。研究も同じですよね。