構造は似とろうが


 1つの反応がうまくいくと、他の基質にも応用してその反応の汎用性を広げる検討をします。その場合、検討するのは構造が似た基質から始めます。

 ある学生がフェニルヒドラジンを使った反応を試したところ、定量的に生成物を与えることを見出した。その結果に気分を良くした学生は、少し反応生の劣る4-ニトロフェニルヒドラジンを用いてみた。その結果、この場合も反応は定量的に進行し、対応する生成物を与えた。こうなれば、もっと反応生を落としてみたらどうかと思うのは当然である。2,4-ジニトロフェニルヒドラジンを用いてみると、収率は50%に低下した。学生は「ここら辺が限界やったかあ」と思い、その結果を先生に報告した。
 それからしばらく経ったある日、試薬棚の整理をすることになった。学生は普段からお世話になっているアミン類の担当になり、順番に瓶の状態(ラベルや瓶のの汚れ、蓋の欠け)などをチェックしていた。2,4-ジニトロフェニルヒドラジンの瓶を手にした時、そこには「50%含水」という文字が目に入った。「もしかして」と思って、以前の実験で用いた量の倍を用いて反応を行なったところ、定量的に生成物が得られたので合った。

構造が似ていると、同じような性質を示すと思いがちですが、置換基によって性質が異なることもあります。1つ1つ注意して使用するべきですね。