過信


 実験室で手が取られる操作は、自動化できるならした方がストレスなく実験をすることができます。

 ある研究室では、研究室の学生全員が脱水溶媒を使用していた。従って、ドラフトチャンバーの1つを溶媒精製に用いていた。3つの蒸留装置が組み立られており、マントルヒーター内のフラスコにはナトリウムーベンゾフェノンで紫になった溶媒が入れられている。溶媒を必要とする人がヒーターのスイッチを入れて還流加熱をして、上部の受けに溜まった溶媒を抜き取って使用するというシステムである。冷却水は常時流されているものの、水道の蛇口には流量センサーがあり、水が停まった時にはヒーターの電源が自動的に切れる安全装置付きである。
 ある日、水道工事のために、建物全体が断水になった。水が使えなければ仕事にならないので、職員も学生も早々に帰宅した。翌日、溶媒精製をしようとした学生が、慌てて先生の部屋に駆け込んできた。断水になってもヒーターの電源が切れておらず加熱され続けた結果、1 L近いジエチルエーテルは全て気化してなくなっており、フラスコの底には青く着色したナトリウムが乾固していた。1つ間違えば過酸化物が生じて爆発するところである。先生はすぐに溶媒を追加してことなきを得たのであった。

断水しても、タンクに溜まっている水が出てきますので、しばらくは水が流れます。この場合、徐々に水圧が下がっていったので、センサーが感知できなかったものと思われます。何事も機械任せにしていると、目が届かなくなることがあります。時々は人の目でチェックをするべきですよね。