俄雨


 空気中の湿気や酸素は時々、反応の邪魔になります。厳密にそれらの影響を除く場合はアルゴン雰囲気下で反応を行ないますが、湿気の侵入を防ぐ程度であれば、反応容器の上に塩カル管を取り付けておいて、そこに乾燥剤を入れるだけで十分です。

 ある学生が加熱実験をするための準備をしていた。この反応では湿気が禁物なので、塩カル管を取り付けることにした。塩カル管に綿を詰め、そこに青色シリカゲルを入れて、出口のところにも綿を詰めた。ナス型フラスコの上に玉入り冷却管を挿し、その上に準備した塩カル管を取り付けて加熱を始めた。溶媒が沸騰して、その蒸気が還流するまで見届けた後、実験台の整理を始めた。
 しばらくすると、急に雨音がした。外は晴天なので、不思議に思って後ろを振り返ると、実験台の上には先ほど詰めた青色シリカゲルが実験台の上を跳ねながら転がっていた。学生は「試薬が湿気でつぶれませんように」と願いながら、実験台の上のシリカゲルを回収したのであった。

これの原因は明らかに綿の詰めすぎです。シリカゲルがこぼれ落ちないように念入りに綿を詰めたのでしょうが、それが逆効果でした。反応容器の中は密閉形になってしまい、気化した溶媒蒸気によって加圧になったのでしょう。何事も適度な量というものが必要ですね。