付き添い


 私たちの生活は便利になり、様々なことが自動化されるようになりました。それは実験室の中でも同様です。

 ある学生はカラムクロマトグラフィーの操作が嫌いであった。特に試料を展開している間、上と下の両方に注意を払わなければならず、実験台から離れることができないことに苦痛を感じていた。しかし、そんなことを言おうものなら、「それ位、我慢できんでどうする!」と怒られそうである。でも、「ものは試し」と思って先生に伝えてみたところ、意外に「そう言えば、使うてないフラクションコレクタがあったと思うで」との返事。学生は早速、その機械を引っ張り出してきた。電源スイッチを入れて動くことも確認した。
 実際にカラムの下にフラクションコレクタをセッティングして、溶媒を流し始めた。試験管の中に溶媒が一定量溜まると、自動的に動いて次の試験管が溶媒を受けるという動作を見て、「これでだいぶ楽になるわ」と思って、実験台から離れようとした瞬間、ギギーという音がして、試験管の動きが止まった。手で押してやると元通りに動いたので、機械のどこかが錆び付いていたようである。結局いつ止まるか分からない機械を放っておくこともできず、いつものように付き添っていたのであった。

かつては面倒であったことが自動的にできるようになったことが多くあります。ただ、何もかも機械任せにすると小さな変化を見逃すことも多くなります。手作業には手作業のメリットもありますから、うまく使い分けをするべきでしょうね。