待てど暮らせど4


 有機溶媒は沸点も低いですし、揮発性も高いので、一部の溶媒を除いて濃縮をすることが容易です。しかし、水溶液を濃縮するとなると、水浴の温度をかなり上げなければなりませんし、高い減圧度を必要とします。

 ある学生が水溶液の濃縮をしていた。しかし、ダイヤフラムポンプでは水浴の温度を上げても、なかなか濃縮されない。そこで、油回転真空ポンプをロータリーエバポレーターに接続して、減圧度を上げることにした。実際にポンプを稼働させると、すぐに冷却管のところに水滴が付き始め、濃縮が順調に進行していることが窺えた。しかし、ある時点から、フラスコの中の液量が減らなくなった。それから待つこと30分。液量は変わらないままであった。
 先生にそのことを報告すると、エバポレーターのコックを捻った。しかし、ウンともスンとも言わず、空気がエバポレーターに吸い込まれる様子が見られなかった。そこで、真空ポンプのスイッチを止めて、冷却トラップを持ち上げると、中には氷の塊がぎっしりと詰まっていたのであった。

これは蒸発した水が、水道水の温度では凝結せずにそのまま真空ポンプの方に吸い込まれた結果です。この学生がしていたように、中間には冷却トラップを挟んで、蒸気によるポンプの損傷を防ぐのですが、大量の水蒸気がトラップに流れ込んだため、そこで凍ってしまったのでしょう。詰まっていることに気付かなかったとはいえ、これだけの溶媒がポンプに入ると、かなりのダメージを与えてしまうので、トラップを使った甲斐があったというものですね。