道半ば


 実験では酸をよく使います。硫酸などはほぼ100%の濃度と考えて良いですが、他の酸は飽和水溶液の状態です。

 ある学生が塩酸を基質に用いた実験をしていた。濃塩酸は12 Mなので、その値を用いて計算した量を仕込んだところ反応は高収率で進行した。その結果に気を良くして、次は基質を臭化水素酸に替えて反応を行なうことにした。しかし、塩酸の時のように効率良く反応は進行してくれなかった。そこで、先生に相談した。
 先生「仕込んだ量をどうやって計算したん?」
 学生「比重と分子量から普通に計算したんですけど」
 先生「臭化水素酸の濃度が50%やというのは知ってるか?」
 学生「・・・」
 同じ量の臭化水素酸を加えてさらに反応をすると、目的の生成物が収率良く得られたのであった。

塩酸は37%、臭化水素酸は50%の飽和水溶液だということを知らない学生が意外といます。塩酸のようにモル濃度を常識的に知っているものだと問題はないのですが、臭化水素酸のように普段あまり使わないものですと、気をつけなければなりません。瓶のラベルにマジックで大きく濃度を書いておくと良いかもしれませんね。