シャンパン


 試薬も千差万別。色々な性質を持つものがあります。要冷蔵の試薬は、室温では不安定であるからなのですが、それも試薬によって程度の差があります。

 ある研究室で、試薬棚の整理をしていた。この研究室では試薬管理システムで試薬の在庫は把握している。しかし、数ヶ月使っているうちに、他の場所に戻されていたり、使い切っているのに廃棄処理がされていなかったりするために、棚卸しの作業が必要になる。学生たちは手分けして、試薬棚から試薬を全部出して、瓶の周りが汚れている場合は拭き取り、ラベルが消えてそうな場合は貼り直すなどのメンテナンスも加えながら、試薬の有無を確認して棚の正しい場所に試薬を戻すという作業をしていた。
 ある学生が「冷蔵庫が少し臭いんで、試薬を出して拭き取り掃除をしましょか」と提案した。冷蔵庫から試薬を出すと、思った以上に大量の試薬が保管されていた。同様にチェックしながら戻す作業をしていると、思っていた以上に時間を要した。学生がジケテンの瓶を持ち上げて少し前に傾けた瞬間、蓋がシャンパンを開けたように吹き飛んで天井に当たった。天井に残った茶色い染みを見た学生は「これが自分の方に向いてたら・・・」と想像して、背中に冷たい汗を流したのであった。

試薬には要冷蔵と表記されているものがありますが、室温でも普通に取り扱えるものも結構あります。その一方で、今回の場合、「これくらいの時間なら大丈夫やろ」という時間が、試薬が分解するには十分に長い時間であったのでしょうね。(次回に続く)